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イベントレポート
2020.06.29
「これからの照明デザインのNew Normal」
新型コロナウィルスが世界中で猛威を振るい、これまでの日常が失われ、「新たな日常」と言われる環境下で、IALD-Japanとしてどのような活動をしていくべきなのか。IALD-Japanの同世代メンバー4名がパネリストになり、「これからの照明デザインのNew Normal」はどうなるのかを探るWEBINAR(ウェビナー)を開催しました。
永島氏が用意した問いに対してパネラーが答えていく中で、前回のWEBINARで面出氏が問いかけた「照明という立場から何を考えるのか、あるいは、どういう社会のベースに立って照明デザインをやっているのか」にも答えていきながら、照明デザインの「New Normal」はどうなるのかを探っていく形でWEBINARは進んでいきます。
まずは、『白熱球って使ってますか?』という質問からスタート。使う、使わないがキレイに半々に分かれ、4人それぞれの実情が語られます。白熱球を使わないという永津氏は、クライアントのLEDでの設計という要望もあるが、白熱球に対応する器具もほとんどないのも理由の1つとしてあげています。そして、小西氏は、今後のデジタル化やシームレスに光でつなげるという意識を持つと、おのずとLEDを選んでいると言います。
一方で、白熱球を使うという眞﨑氏でも、仕事上で使うことはほとんどなく、クライアントからの要望があれば使う程度とか。永島氏は、『エネルギーを無駄にしていませんか?』という問いに対して、単純な消費電力でいうと非効率的ではあるので、LEDがある今、白熱球はほとんど使われなくなっていると言います。また、自身の仕事でホテルのステージに白熱球を使用した際の話として、500Wの熱で当てられるとステージで照らされている特別感があり、LED時代にあっても、演出として白熱球を使うのはありなのではないかと語っています。
『照度・輝度・演色性は重要ですか?』という問いに対しては、眞﨑氏はどれも1つだけあれば良いというものではなく、照明デザインをする上で、そこのバランスが重要だと言います。さらに、「子供や教育のための照明デザインとは何か」を考えたとき、やはり勉強する時には、生き生きした色味を感じられる演色性の良い照明で照らし、例えば緑や白などの色が目に飛び込んでくるほうが、やる気につながっていると話しています。
また、小西氏は、子供は幼児教育から小学校教育、中高大と約18年のすごく凝縮された時間の中でたくさんの経験をし、目に入ってくるもの、感じるものというのがドラスティックに変わっていく。そのためにも、感じられる光の要素は丁寧にデザインしていく必要があると言います。デジタル社会を迎え、子供がリアルに経験するシチュエーションが少なくなってきた今、「外で遊ぶ」ことと「空間を楽しむ」ことの両立を、どのようにして光でこなしていくかが今後は求められるのではないかと課題をあげています。
パネラー4名による議論は、自身の仕事への取り組みや考え方、さらには、「誰のための照明デザインなのか」という話へと進んでいきます。
照明デザイン自体は社会的な要素が強い。ただ、社会と施主のどちらに対する照明デザインなのかを考えると、そのパワーバランスはとても難しくなってしまうと、小西氏は言います。これに対し、眞﨑氏は「照明が好きだから」というのが根幹にあり、仕事を抜きにすると、照明デザインは自分のためかもしれないと。一方で永津氏は、クライアントではなく、それを使う利用者に対してどうするかをメインにして考えていると言います。それは、クライアントにしても結局のところ、利用者のことを考えて施設づくりをしていて、アプローチが違うだけで目指しているところは一緒だと、様々なクライアントに会って実感していることだと話しています。
最後に、永島氏は3人に対して、『照明デザインとは何をデザインすることですか?』と問いかけます。小西氏は「時間をデザインすること」。永津氏は「気持ちをデザインする仕事の1つ」かもしれないと。眞﨑氏は、照明は人が感じるものであり、多くの人が気持ちよく感じる「感性を育めるような照明環境」を作っていきたいと答えています。3人の話を聞いた永島氏は自身の仕事を振り返り、照明でデザインするのは「人の動き」だと言います。そして、「これからの照明デザインのNew Normal」はどうなるのかという冒頭の問いに対する答えとして、人が利用する場所・空間で、どういうふうに楽しめるのか。その場所でリアルに体験できることをしっかり作り、今まで以上に楽しめる空間というのが必要だと締めくくりました。
【日時】2020年6月29日
【会場】IALD-Japan WEBINAR
【パネラー】小西美穂、永島和弘、永津努、眞﨑雅子 ※敬称略
【主催】IALD-Japan