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イベント レポート

2021.09.9

のぞいてみよう!照明デザイン vol.3

2021年8月6日に「のぞいてみよう!照明デザインvol.3」と題したWEBINARが開催されました。このWEBINARは照明デザインに興味を持つ学生に向けたイベントで、照明デザイナーの職能や仕事ぶりについて、実際に現場で活躍している照明デザイナーが様々なエピソードを交えて紹介します。今回も、照明デザイナーの魅力や社会的な役割、どういった仕事に携わっているのか、現役の若手照明デザイナーにお話を伺いました。   まず有限会社シリウスライティングオフィスの戸恒浩人さんより、照明デザイナーが担う社会的な役割についてお話しいただきました。 光の体験を通じて人々の生活や時間を充実させ、公共空間を魅力的にすることが照明デザイナーの役割だという戸恒さん。そのためには、常に新しい光の表現を試みることが大切だと説明してくださいました。 また、照明デザイナーは「本来建築や空間に備わっている美しさを、さらに引き立たせる存在」であるとし、メイクアップアーティストに例えたお話もいただきました。   続いて、2名のパネリスト(有限会社シリウスライティングオフィスの小林周平さん、株式会社松下美紀照明設計事務所のパクホンジュさん)からお話を伺いました。 最初は、大学で建築を学んでいたという小林さんです。実例を挙げながら、照明デザイナーがどのように仕事に取り組んでいるのか、技術面の説明も含めて教えてくださいました。インプットとアウトプットを繰り返してきた小林さんにとって転機ともいえる出来事は、香港勤務での体験。国内で活動しているだけでは分からない、文化の違いや海外からみた日本の照明デザインを客観的に知ることができたそうです。 そして、自分だけの照明デザインを生み出すには、感動的な光に出会う経験・体験の積み重ねが大切だと話してくださいました。 次は、マスコミ系の大学卒業後、一般企業への就職を経て照明デザイナーになったという、一風変わった経歴の持ち主であるパクホンジュさんです。実際に携わったプロジェクトをもとに、シミュレーションや現場の調査、現地での実験の重要性や、それらを組み合わせてデザインする緻密な仕事について、丁寧に解説してくださいました。 また「Variety、Versatile、Value」の3つのキーワードをあげ、照明デザイナーという仕事の魅力は、様々な人と関わりながら社会に寄与できる照明を生み出すことであり、自分の感受性を高めるために積極的に勉強することの重要性を話してくださいました。 質問コーナーでは、学生代表として東北工業大学の五十嵐聖人さんから質問していただきました。「照明デザインの力で、どこまで都市の魅力を生み出すことができるのか」という質問に、小林さんは「限界を明言したくない」と前置きしつつ「一つの都市全部を照明デザインすることは難しいが、関わった建物の照明とその都市の景観の相互作用を考えながらデザインすることで、都市空間の魅力を高めることができる」と回答されました。 パクさんは「プロジェクトの中で照明のデザインだけでなく景観のガイドラインをつくることもあり、それによって都市空間を変化させることができる」と回答されました。また、このセミナーの幹事である馬渡秀公さんと梅田かおりさんにも伺うと、馬渡さんは魅力を生むというよりも、一つの物件の照明から都市が育っていくイメージを持つことの大切さを、梅田さんからは一つ一つの光の積み重ねが都市の魅力につながることを語ってくださいました。 最後に戸恒さんより、ガイドラインによって都市景観が画一的になってしまう恐さと、リーダー的な存在となる光を定めることで、その周囲に新たな光が誕生し、都市全体の魅力を高めていくこと、それらの重要性について、ご指摘いただきました。 「シミュレーションで意図していないところで上手くいった経験は?」という質問に対しては、パネリストのお2人とも「意図したように表現することを心がけている」とした上で、小林さんは、人工照明と自然光がきれいに組み合わさった瞬間に感動すると回答。パクさんは、照明の色を合わせるには空間や器具を実際に見た上での判断が重要と回答されました。戸恒さんは、シミュレーション通りにならないことは沢山あり、現場で対応しながら解決していった経験を話してくださいました。   その他にも学生の皆さんの鋭い質問にパネリストのお2人も驚きながら、その熱意に応えるように詳しく回答してくださり、今回のWEBINARは終了しました。 【日時】2021年8月6日 【会場】IALD Japan […]

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2021.09.8

第30~32回 コミュニケーションバー InaBarレポート

「InaBar」はIALD Japan事務所のバーコーナーで行われるユニークな「トーク&バー」。話題提供者が店主である稲葉さんより適宜指名され、基本毎月第一火曜日(GWは除く)にハイクラスな照明の話題とハイクラスなワインを楽しんでいただけます。条件はマイグラスの持参。ソフトドリンクも多種ご用意しておりますのでワインを飲めない方も是非ご来店ください。   2021.04.06 第30回 『FEEPROPOSAL of Lighting Design と、照明デザイン見積』 スピーカー:金田篤士さん 開催場所:オンライン   タイトルは固いのですが・・・なぜか、金田さんは事務所のキッチンからライブ配信。内木さんをアシスタントにして、撮影は内野さん。3分間クッキングのテーマ音楽からスタート。 料理を作りながら、金田さんから参加者の皆さんへ質問です。   「この一品、いくらだったら注文しますか。」   回答は500円から1200円ぐらいまでマチマチ。さて、実際はどのくらい原価が掛かっているか?料理人の人件費を含め積み上げ式の試算。その結果、材料費は一皿あたり250円から500円ほど。人件費を入れて計算すると2300円ぐらいにしないとビジネスにならない。スタート時の注文したい金額と相当の値差が出てしまいました。そこで金田さんから参加者の皆さんへ更に質問です。   「この一品を2300円で注文を受けるにはどうしたらよいか。考えてみてください。」 […]

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2021.06.21

第6回IALD Japan WEBINAR「『ハルカの光』作者が読み解く、「これからの光」とは・・・?」

今年2月にNHK Eテレで放送されたドラマ『ハルカの光』(全5話)。芸術品の領域に達した「名作照明」の専門店で働く主人公ハルカが、顧客に合う照明を選んでいく中で、相手の人生に光が差し、主人公自身も希望の光を見つけていくというストーリー。今回は、脚本を手がけた新進気鋭の作家矢島弘一氏と、IALD Japan理事の小西美穂氏に、ニューノーマル時代における“新たな光”との向き合い方を熱く語っていただきました。     対談は、矢島氏と小西氏が“朝ドラのような出会い”をしていたという話題からスタート。同じコーヒーショップの同じ“お気に入りの席”を密かに取り合うライバル関係だった二人。この対談企画が持ち上がり、小西氏が矢島氏の顔写真を資料で確認したとき、初めて「いつもあの席に座っている人だ!」と知ったとのこと。   そんな和やかな雰囲気で始まった今回のWEBINARは、矢島氏自身の光に対する意識や、ドラマ制作に関わる話などを、たっぷりとお聞きしました。   矢島氏は昔から、蛍光灯よりも自然光を好んだり、自分が気に入った照明や家具には“一般的なデザイン”とは異なる特徴があることを自覚されていました。そして20年以上前、クリエイターの友人の家を訪ねたとき、特徴的な照明器具や自然光を取り入れたこだわりの空間が「とても居心地が良かった」ことから、自分の感覚は間違っていないと自信がついたそうです。 その経験を機に、矢島氏は脚本家の道へ。光を意識することで人生が変わった『ハルカの光』の登場人物たちにように、矢島氏も光に背中を押されたのです。   「自分が明かりや光を意識して生活していることを制作陣は知らなかっただろうから、声をかけてもらえたことに何かの縁を感じた」という矢島氏。ただし、オファーが来た段階のプロットは、ハルカの光に対する意識が内向的に描かれていたそうです。そこで「光を見て背中を押された、という話にしませんか」と提案したという制作秘話を教えてくださいました。 また、第1話にアルヴァ・アアルトのGOLDEN BELL SAVOY、第2話にインゴ・マウラーのOne From The Heartなど、ドラマに登場する数々の名作照明も、矢島氏がインスピレーションに基づいて選定。 たとえば、ボクサーとしての栄光と挫折を味わった左京が登場する3話では、複雑なバックボーンをもつイサム・ノグチがデザインしたAKARIシリーズや、シンプルながらも緻密に作り込まれたToFU(デザイナー:吉岡徳仁)をチョイス。4話では、企画書にルイス・ポールセンのPHランプが指定されていたそうですが、そのときのハルカの思いに通じるのはHERE […]

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2021.03.31

第27~29回 コミュニケーションバー InaBarレポート

「InaBar」はIALD Japan事務所のバーコーナーで行われるユニークな「トーク&バー」。話題提供者が店主である稲葉さんより適宜指名され、基本毎月第一火曜日(GWは除く)にハイクラスな照明の話題とハイクラスなワインを楽しんでいただけます。条件はマイグラスの持参。ソフトドリンクも多種ご用意しておりますのでワインを飲めない方も是非ご来店ください。   2021.01.05 第27回 『言葉で伝える~あかりの演出』 スピーカー:角田尚法(かくたなおみち)さん 開催場所:オンライン 2021年、年明け早々5日(第一火曜日)大雪の富山から、オンラインの開催となりました。 角田さんは富山で『角田尚法あかりの演出』というラジオ番組を持って現在進行中で、番組はすでに730回を超えているそうです。そんなことで『言葉で伝える~あかりの演出』というテーマで始まりました。 聞き役とのやり取りで進めているそうで・・・、来店の面出さんからも久米宏さんとラジオ番組に出た時の話、東海林さんからは『マツコの知らない世界』に出た時の話など、聞き役は相手のことをすごく調べている…などといった裏話も出、また、富山に行った際にお酒を飲み交わした、飯塚さん岩井さんからもコメントもあり、話が弾み、コミュニケーションが取れました。 角田さんから、『「楽しかった」です。InaBarとても素敵な会だと思います。来月もぜひ参加したいと思います。』とコメントを頂きました。 InaBar店主:稲葉裕   2021.02.02 第28回 『愉しみとなりわいを行き交う夜』 スピーカー:富田泰行さん 開催場所:オンライン 夜を眺める趣味的な愉しみと、景色の中で光を扱う夜の仕事(なりわい)にするという話題でした。城達也の『ジェットストリーム』のナレーションと画像も登場。 超リアルな上空からの超広角な東京夜景の紹介がありました。 『LENSALOFT』と言う特殊な技術で世界の都市の上空写真・動画を配信しているそうです。 […]

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2021.03.18

Chase the Dark 2021

2021年度の「Chase the dark」は昨年に引き続いてCovid-19パンデミックの緊急事態宣言下での実施となりました。このイベントは各所での光の風景や、現象をSNSに現地時刻でアップし時差ワールドツアーで世界を繋ぐ、と言う企画です。COVID-19パンデミック前までは、仲間や家族で集合して参加し、その光の中でのアフターパーティもあったのですが、「集まることを避ける」というパンデミックレギュレーションの元、昨年は其々が個々でSNSにアップして巡る地球一周となりました。しかしその状況は、SNSにアップした写真の反応が感じられない、見えない、つながりがリアルではない寂しさをアップ後に感じ、果たしてコミュニケーションなのか?と言う意見から、IALDJ 2021年の開催はZOOMにてそれぞれのライトアップをLIVEで繋ぐ形式としました。 昨年よりも日本国内でも様々な環境、地域に身を置きながら、光という共通手段を使いながら、楽しい時間となりました。今年のテーマは‘acknowledge the power of light in human life’ 様々な美しいシーンや、光の現象がアップされている中で、私は、日常の生活の中にある飲食店空間が、非日常に追いやられながらも、楽しい日常の場所に戻ることを念頭に、人数制限しながらも継続営業している姿勢を応援するという想いで、近所のよく行く「BAR」をライトアップし、SNS投稿し、その現地からの生中継のとなりました。LIVETIMEは日本での参加者も昨年より増え、様々な光の写真や映像を共有できた時間になり、アフターパーティはできませんが、オンラインLIGHTパーティになれた様に思います。 IALDのHPでもToronto/Eastern Canada  Melbourne  New York / New […]

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2021.03.3

第24~26回 コミュニケーションバー InaBarレポート

「InaBar」はIALD Japan事務所のバーコーナーで行われるユニークな「トーク&バー」。話題提供者が店主である稲葉さんより適宜指名され、基本毎月第一火曜日(GWは除く)にハイクラスな照明の話題とハイクラスなワインを楽しんでいただけます。条件はマイグラスの持参。ソフトドリンクも多種ご用意しておりますのでワインを飲めない方も是非ご来店ください。   2020.09.01 第24回 『見たかった景色、見ようとする景色』 スピーカー:彌吉 泉美さん 開催場所:オンライン 10名の来店者で開催されました。 旅行のパンフレットで見た北欧の雪景色の中にエイリアンの卵の様にひかり、点在するホテルの写真。彌吉さんが是非行きたいと、友人を誘って実際に現地に行かれた体験を話して頂きました。 彌吉さんからは『ホワイトアウトではないキラキラアウト』『スマホでは感動は撮れない。』など、彌吉さんらしい言葉で語って頂きました。 InaBar店主:稲葉裕   2020.10.06 第25回 『光とセレンディピティ』 スピーカー:目黒 朋美さん 開催場所:東京デザインセンター5階crafTecギャラリー・オンライン 目黒さんから初めに、セレンディピティとは、『素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。瞬間的で見過ごしてしいそうな何かを丁寧に見つけることで気づき・ポジティブになれるような、そんな日常を非日常に一瞬変えるような光たちとの出会いを通して、本日はInaBarを一緒に楽しめたら・・・。』とテーマの解説と来店の意気込みを話されました。 目黒さんのセレンディピティは人生の節目にハワイに行き、ホテルの高層階の窓から見た、虹の話。“到着した時はホテルの足元から伸びていた虹が時間とともに遠くに離れていった。帰国最終日、何気に窓を見たら遠くに虹が見えた。暫く見ていたら、虹が近くに寄ってきた・・・・・。これは科学的に分析すれば太陽に背を向けて42°の角度で水蒸気の粒の中で分光が行われた結果である。太陽の動きで虹が遠のいたり、近づいたりしたのである。虹が近づいてきた現象をポジティブにとらえ、次のステップに行くことを決断した。”という話をされました。 InaBar店主:稲葉裕   […]

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2020.11.24

第5回IALD Japan WEBINAR「大阪のおっさんたち(その歴史と将来)」

今回は「大阪のおっさんたち」がテーマ。関西における照明デザインのルーツや特徴を含めて歴史を紐解きながら、総会などでは知ることのできないパネリスト達の経歴や仕事の紹介を通して、関西にもこんな人がいるんだ!と知ってもらおうとWEBINARを開催しました。

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2020.11.11

第4回IALD Japan WEBINAR「全国で活動する若手照明デザイナー」

現在IALD Japanに所属する照明デザイナーは90名を超え、北海道から九州まで様々な場所を拠点に活動を行っています。今回のWEBINARは「全国で活動する若手照明デザイナー」をテーマに、オンラインセミナーの特性を活かし、北海道エリア、九州エリアの若手照明デザイナー2名をパネリストに迎え、それぞれの活動を紹介するとともに、その土地ならではの光や仕事にまつわるエピソードについて話していただきました。   まずは、モデレーターである東京のRipple designの岡本賢氏より、今回のパネリストである福岡の仁設計の青木千春氏、北海道のKaori Endo Lighting Designの遠藤香織氏の紹介があり、普段会員同士でもあまり聞くことのできない自己紹介やプロジェクトの話をうかがうところからセミナーが始まりました。 仁設計の青木氏は生まれも育ちも九州で、出身の長崎市は世界の新三大夜景に選ばれるほど非常に美しい夜景で知られ、ランタンフェスティバルやハウステンボスの光の王国など、地元が光の観光都市としての成長期に育ってきたと言います。建築を学んでいた学生時代に照明デザイナーを志し、福岡にある九州随一の照明デザイン事務所に勤務。プロジェクトを通して都市の夜間景観の創造に深く関わる経験をし、建築家のご主人と立ち上げた照明と建築のデザイン事務所で「記憶に残る九州の光景をつくる!」と目標を掲げ、照明デザイナーとして活動をしていると話されました。   現在携わっているプロジェクトは、住宅から店舗への改装や住宅リノベーション、佐賀での寺院の秋の紅葉ライトアップ、さらには福岡という地の利を活かして、空路で一時間半である隣国の中国での住宅リノベーションなど様々。それぞれのプロジェクトで心がけているのは、その地方の伝統や土地柄を尊重した計画を立てることだと話してくださいました。 続いて、北海道の札幌市で照明デザインの活動をされているKaori Endo Lighting Designの遠藤氏。生まれも育ちも北海道で、大学卒業後に東京の照明デザイン事務所で数年勤務した後、スウェーデン王立工科大学の建築照明デザイン科大学院に留学。卒業後は現地ストックホルムで照明デザイナーとして計6年ほど勤務し、2014年秋に帰国して北海道で独立、現在は主に道内の宿泊施設や個人邸、ランドスケープやオフィス、保育園などの照明計画をされているそうです。   プロジェクトについては、スキーリゾートや札幌雪まつりのイベント照明などについて話されました。北海道はスキーリゾートの開発が盛んで、ホテルや別荘、民泊のような宿泊施設などのプロジェクトが多く、設計範囲に屋外の照明計画が含まれる場合は、まず冬季に雪が積もった状況を想定して照明プランを考えるそうです。例えば積雪を見越して、あるプロジェクトでは特注で5m程のポールとスポットライトを組み合わせた照明を採用し、樹木やランドスケープのポイントとなるエリアを照らしました。また、光の効果として輝度が夏と冬では数倍変わってしまうので、常にそれを念頭に置いて冬に合わせた明るさを設定し計画を行うそうです。   別荘住宅の照明計画であれば立地が自然の中にある環境で周りが完全に闇というケースがかなり多く、市街地と全く異なる明るさのバランス調整を常に考えていると言います。普段の仕事とは異なる例外的なプロジェクトとして、イベント照明のコンセプトデザインと監修を担当された2018年の「札幌雪まつり」を紹介。その年は日本とスウェーデンの外交樹立150周年記念の年にあたり、スウェーデンの教会を雪像で再現してライトアップするというもので、かなりカラフルな光を用いた遊びのある演出を計画し、建築照明とは違った面白さがあったと話されました。 その後、モデレーターの岡本氏の自己紹介も簡単にあり、岡本氏の問いにパネリストのお二方が答える形でディスカッションへと進んでいきます。 […]

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2020.10.15

「アジアの拠点都市で仕事をする照明デザイナーに聞く、「これまで」と「これから」」

新型コロナ禍に見舞われ、第6期が始まる頃には予想もしていなかった状況となった2020年。今期最後となる第3回WEBINARはリモートの利点を活かし、アジアの拠点都市である福岡・香港・シンガポールの3つの都市をつなぎ、海外に拠点を置き活動する照明デザイナー2名をパネリストに迎えての開催となりました。インターネットを使い世界中どこにいても手軽に打ち合わせができる今、海外で仕事をする2名のパネリストが肌で感じる「これまで」と「これから」について、自分たちが仕事をする国の状況も踏まえて、詳しく話してくださいました。   まず初めに、香港からLIGHTLINKS INTERNATIONAL LIMITEDの田中氏が登場。イギリス留学やイタリアでの勤務経験、国内でも海外案件を中心に活動していた経緯もあり2011年に香港で今の会社を設立。丸9年を迎えた2020年はとても大変な年になり、香港ではコロナは第1・2波と比較的コントロールされているものの、仕事をする上では昨年からの社会情勢の不安定さが心配と田中氏は言います。「スタッフもほぼ全員香港人で年齢も若いので、彼らの将来を思うと今後どう仕事を進めるかということをよく考える必要があるし、2020年はターニングポイントになる年だ」と話されました。仕事としては香港が4割、中国本土が4割、あとはマカオその他といった割合で、プロジェクトの種類としてはあまり絞り込むことなく、色々なことを満遍なく進めているそうです。   続いて登場したのは、シンガポールに拠点を置くnipek(ニペック)の藤井氏。もともと海外志向が強く、アジアで仕事がしたいということもあり2009年にシンガポールに渡り、2013年に今の会社を設立。シンガポールでの仕事が8割、海外の仕事が2割あり、海外の仕事は国もばらばらで、クライアントはシンガポールにいるのにプロジェクトはギリシャ、コラボレーションする建築家の事務所はアメリカにあるということもあるが、国籍を気にせず働くこの環境が好きだと藤井氏は言います。コロナの状況については、4月にサーキットブレーカーが発動され2ヶ月間の不要不急の外出禁止はあったが、今は平常に戻りつつある。ただ、建築現場などで働く外国人労働者の中で感染爆発し、国内の建築現場が全て止まるなどシンガポール国内の仕事は大打撃を受けたと話されました。   田中氏と藤井氏の「これまで」の話を聞いたモデレーターの松下氏は、2020年というのは大きな変革期であったけれども、歴史的に見ればこれまでも変革がある年は何度もあったと言います。後半は、この変革期に夢を持ち、アジアを拠点に様々な国の仕事をされているお2人に、今後をどのように考えているのかを「これから」の話としてお聞きしました。 今後について田中氏は言います、「先行きは読めない部分はあるが、自分達が9年で培ってきたノウハウや顧客を大事にして行きたいと考えているので香港から動くことは多分ない」と。一方で藤井氏は、「シンガポールは香港よりも社会情勢が安定しており、外国人でいることの住みにくさもそれほどなく、今は香港から人とお金がシンガポールに移動してきている」と言います。   そして、パネリストの2人から、学生を含め照明デザイナーを目指す次世代を担う人たちに対して、どこで就職・起業するかにとらわれず、自由に仕事をしていくための提言がありました。 まず、「柔軟性」「寛容性」「先見性」の3つをキーワードにあげた田中氏。日常茶飯事に起こる色々なことに動じず、それ受け入れながら対処していく「柔軟性」はとても重要で、要領よくこなしていける考え方の流れを自分の中に確立しなくてはいけないと言います。次の「寛容性」では自分独自の何かを持った上でコミュニケーションを取り、相手の言うことを受け入れ自分の中に蓄積していく、許容できる心の広さが必要である。そして「先見性」。先を読む力、次どうなっていくのかを見誤ると大変なことになる。日頃からい色々な情報に触れ、現地の人やクライアントと話すことで、5年後、10年後にどうなっていたいか、どうしたいかを見出さなくてはいけないと話してくださいました。   藤井氏は、世の中の変化として「アナログからデジタル」「フィジカルからヴァーチャル」への5年分ぐらいの変化が、5ヶ月のうちに進んだようなイメージだと言います。その結果、照明デザインでは2つのことが起こる。ヴァーチャル空間の利便性に反してフィジカル空間の体験が貴重なものになっていくことで、フィジカル空間での体験を良質なものにしていく照明デザインというものは実は需要が増えるというのが1つ。このフィジカルとヴァーチャルの橋渡しを光でデザインしていく、光をメディアとして使っていくというのは非常に可能性があると言います。もう1つは、照明デザイナーの働き方の変化。オンラインミーティングやリモートワークが当たり前になり、どこに拠点を置いているということに重要性はなくなってくるので、国際的に仕事をすることが今よりももっと簡単になっていくと言います。1人1人がこれからどのように働いていくのか、会社を経営しているのであればどういうチームを組んでいくのかというところに多様性と可能性が広がっていくのではないかと話してくださいました。   最後にモデレーターの松下氏から、海外で仕事をする上ではローカルを知るということが重要であると話がありました。その都市の歴史や民族性、人間性、言語を知り、つながることで初めてグローバルな仕事ができる。グローカルという言葉がありますが、グローバルとローカルのどちらも理解している人が仕事もうまくいくのではと締めくくりました。   【日時】2020年8月21日 【会場】IALD […]

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