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イベントレポート
2021.08.27
第7回IALD Japan Webinar「IALD-Jメンバーアンケート結果報告 ここはどうなの?LED vol.1」
今回のWEBINARは「IALD-Jメンバーアンケート結果報告 ここはどうなの?LED vol.1」と題し開催されました。東日本大震災を契機とし、LEDは飛躍的に進化を遂げ普及し、ハロゲンランプや白熱灯などの従来光源から置き換わりつつあります。現場で実際に活用しているからこそ分かる、照明デザイナーの視点からみたLEDについて、様々な意見をご紹介しました。
今回は飯塚千恵里氏(飯塚千恵里照明設計事務所)、野澤寿江氏(株式会社 近田玲子デザイン事務所)、角田尚法氏(maxview一級建築士事務所)がモデレーターを務め、IALD-Jメンバーにも参加してもらう双方向形式での配信を実施しました。
事前に実施されたアンケートではLEDの良い所・悪い所を得失点形式で評価。その結果、良い所では、3位「調色」、同率1位に「器具寸法」と「カラー演出」が高得点を獲得。ワーストは3位「器具のグレア」、2位「演色性」、1位「器具の交換」という結果になりました。
アンケートの項目別自由記述を詳しく見ると、メンバーがLEDに対して評価している点や不満に感じている点が明らかになります。
まずは「光源としてのLED」に着目しての意見をRipple designの岡本賢氏に伺いました。岡本氏はLED照明の色温度や演色性のクオリティは高まっていると評価。従来光源では難しかった色の波長のコントロールやカスタマイズが可能になったことはLEDのメリットですが、メーカーによって同一の色温度や演色性の数値でも、見た目の印象が異なることを課題として指摘しました。
「器具としてのLED」の評価では、器具寸法は良い所の1位となり、一方で器具のグレアはワースト3位となっています。
岡本氏は、建築照明向けの製品開発が進んでいることを高く評価する一方、グレアが強いものや配光バリエーションが少ないものがまだ沢山あることが課題だと指摘しました。
また、合同会社チップスの永島和弘氏は、グレアコントロールが出来なくなったことを指摘。LEDは前面方向にしか光が出ないために、反射鏡による制御方法が限定されることを課題として挙げられました。
カラーや調光などの「演出性」に関しては、LEDが主流となってから照明デザイン設計に携わっている、株式会社松下美紀照明設計事務所のパクホンジュ氏に意見を伺いました。パク氏はLEDでの無線による調光のしやすさを高く評価しているそうです。
一方、ホテル事業に多く携わっている、株式会社ライティングプランナーズアソシエーツの田中謙太郎氏は、メーカーの違いによる調光制御のタイミングのバラツキを指摘。特にホテルでは一般の利用者にとっては快適であるかどうかが一番重要なため、利用者がなめらかに調光できることが当たり前になるとよりよくなるのではないかと指摘しました。
ワースト1位になった「器具の交換」にも関わる、「施工と維持管理」について多く寄せられたのが、新しい製品が次々と生産される一方、生産中止になるものも多いことを問題視する声です。
LEDのマイナスポイントとして、製品の入れ替わりの激しさは度々指摘されています。角田氏は、利用を検討していた照明器具が、在庫がなくなれば生産されなくなることを知り、施工段階で照明を変更したという実例を紹介しました。
また、10年後にもデザインした当時の環境を残すために、先を見据えて計画していると話す株式会社Mantleの久保隆文氏からは、交換時のことを考えての器具開発が必要ではないかと指摘がありました。
一方で、有限会社シリウスライティングオフィスの戸恒浩人氏は、LEDの長寿命化によるメンテナンスのしやすさや、器具の小型化によって、従来光源ではできなかったデザインが可能になったことは評価できるとしました。
LEDについて多くのメンバーが問題視しているのが「街路灯」の問題です。
戸恒氏は、街路灯は照明デザイナーにとって一番由々しき問題だと指摘。公共空間のものだからこその制限があるとはいえ、日本における公共空間のデザイン性の低さは諸外国と比べても淋しいものがあると指摘しました。
最後に、モデレーターの3人それぞれが総評を述べました。角田氏は「アンケートで貴重な意見をもらったことで、照明について楽しく考えられる機会になった」と話し、野澤氏は「寄せられた貴重な意見をシェイプアップして伝えていきたい」と振り返りました。飯塚氏は「自分が思い悩んでいたことをメンバーも同じように考えていたことが分かり嬉しいという気持ちとともに、様々な意見を聞いて参考になった」と締めくくり、今回のWEBINARは終了しました。
~モデレーターからのメッセージ~
この10年程で照明光源が急激にLEDに置き代わる過程で、仕事の道具としてLED光源を使う中で便利になった点と、逆に不便になった点があり、会員の皆さんはどう感じているか聞きたいと思ったのがテーマとしたきっかけです。会員アンケートを取り、結果をランキングしたことで一方向的なセミナーやトークセッションとは異なる会員相互の意識の共有と意見の洗い出しができたかなと思います。多くの会員の皆様から貴重なご意見を頂けたことはとてもありがたかったです。
アンケートではLEDに対する15の設問を行い、数値評価とその評価コメントをまとめた結果ベスト3は同率1位:小型化、カラー演出、3位:調色。ワースト3は1位:器具の交換、2位:演色性、3位:器具グレアでした。この詳細結果をスタジオから生配信で発表しつつ、コメントを寄せてくれた7人の方々をオンラインで結びLEDに対する自身の意見を語っていただきました。アンケート結果や照明デザイナーの生の声を多くの視聴者にとどけることができました。オンラインで登壇くださった7人の方々、ありがとうございました。
LEDはもはや私達の仕事の中で中心的な役割を担う道具であるため、その使い勝手やバリエーションには常に注目し、改善の余地があれば声に出していきたいと考えています。アンケート結果からは私達が考える現状の問題点が浮かび上がりましたが、すでにこの1年で変わってきた点もあり、今後もLEDは進化していくと思います。再びテーマとして企画する際には、また会員の皆様からのご意見を広く募りたいと思っております。その際はご協力の程よろしくお願いいたします。
【日時】2021年8月27日
【会場】IALD Japan WEBINAR
【モデレーター】飯塚千恵里 角田尚法 野澤寿江
【主催】IALD Japan