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イベントレポート

2022.09.1

のぞいてみよう!照明デザインvol.4

2022年8月5日に「のぞいてみよう!照明デザインVol.4」と題したWEBINARが開催されました。このWEBINARは照明デザインに興味を持つ学生に向けたイベントで、照明デザイナーの職能や仕事ぶりについて、実際に現場で活躍している照明デザイナーが様々なエピソードを交えて紹介します。

 

まずマワタリデザイン株式会社の馬渡秀公さんは、照明デザイナーを「都市環境、ランドスケープ、建築物、インテリア、アート、イベントなどを対象とし、建築家や事業主とのコラボレーションで、照明のスキルを駆使して空間作りにかかわるプロフェッショナル」と定義しました。

    

続いて、株式会社ライティングプランナーズアソシエーツの中村美寿々さん、焔光景デザインの原田武敏さんの2名のパネリストからお話を伺いました。

最初はフランス留学中にパリの夜景の美しさにひかれて照明デザイナーになったという中村さんです。

携わった仕事の実例を挙げながら、現代に求められている照明デザインの役割、長崎市で都市全体の夜景デザインに関わった案件について詳しく教えてくださいました。

 

現代の都市照明デザインには、環境への配慮の先に「その都市ならではの光、都市の個性を表現する都市照明が求められている」と指摘。

長崎市の実例では、街並みの歴史などを伺いながらの現地調査と並行して夜の光環境の調査を行い、課題を抽出して、遠景と中・近景両方の視点から双方向的に夜間景観の向上に取り組むことを目指されたそうです。 更に、港の地形を生かした「港に流れ込む輝き」、和華蘭文化の町々の個性を表現する「おおらかに彩られたまち」、キリシタンや被爆の歴史を感じさせる「祈りを誘う灯り」という3つのコンセプトを夜間景観の整備にあたり掲げたそうです。

平和公園エリアでは、静けさを邪魔する不快なグレア(まぶしさ)をなくし、適正な照度の計画と、平和を希う光、祈りの感情を呼び起こす光を表現しようと知恵を絞られました。祈念像の照明はできるだけ像の陰影を強く見せないようにするために、一般的な下からライトアップではなく超狭角の光で遠距離から水平方向に照らす手法に変更し、祈念像への道を街の軸線に据えて広場には格子状に光の粒を設置しました。大浦天主堂や祈念坂、鎮西大社 諏訪神社の鳥居、眼鏡橋の照明も、策定した夜間景観マスタープランに沿って改善が行われました。

地域全体を結びつける線・面的な視点、住まう人が心地よく感じられる夜の街並み、観光客が宿泊する動機付けになる実利的側面、自分たちの街の明かりだと誇ることができ、かつ人々に愛される夜景を意識されたとのことです。

    

次は、日本庭園や寺社仏閣などを、紅葉や桜のシーズンに仮設照明でライトアップされている原田武敏さんです。携わったライトアップの事例を紹介し、ライティングによる空間の見え方の変化、仮設照明で工夫している点について解説してくださいました。

浜離宮恩賜庭園など同じ場所でも季節ごとに異なるライトアップの写真を紹介し、「仮設=光の多様性」として「光によって空間の印象はすっかり変わる」と指摘。旧古河庭園のライトアップを例に、それまでの大型の器具による投光照明ではなく、光量の小さい器具を使い、太陽に向かって咲くバラの花に対して、夜も同じように上からのダウンライティングの光でバラを浮かび上がらせ、背景となる周囲の木々に光を当てて奥行き感を出す―─といった工夫によって、空間が劇的に変化する様子を示されました。

「庭師が丁寧に手入れしている木々の樹形を丁寧に見せたい。同じ石垣でも光の当て方、色、強さが違えば印象が変わる。光の当てかたで、昼間は見えにくいノミの跡が見えたりする」「歴史的な建造物や庭園に自分なりの解釈で光を当てて別の見え方、表情を作り出せるのも仮設照明デザインの楽しみ」と仕事の醍醐味を語られました。

    

続いて、福岡大学大学院2年の福永脩生さん、工学部4年の清水菜月さんから、学生代表として質問していただきました。福永さんの「照明器具を置くと、昼に訪れる人に見えてしまうが」という質問に、中村さんは「悩ましい。器具が小さくなり、目につきにくくなっているが、できるだけ隠れる場所に置くのと、周囲の色に合わせて塗装して見えてもよいように配慮している」。原田さんは「見えにくい石の裏や木の枝に器具を置き、ケーブルを杭のロープ柵に這わせるなど昼間に気にならないよう施工するように工夫をしている」と苦心を明かされました。

清水さんの「照明自体が主役になるときと、対象物を照らすライトアップとの使い分けで意識していることは?」との質問には、中村さんは「大事な論点。建築や空間、モニュメントを見せたいときは、光そのものが主役になるのではなく、対象物にどう陰影をつけてみせるかを意識する。対してイルミネーションは光のキラキラ感や演出効果そのものを楽しみたいとき」と違いを解説されました。原田さんは「カラーライティングはライトアップとイルミネーションの中間で、光の色自体を見せる演出である」と話されました。

最後に、司会の梅田かおりさんが「光自体は見えない。光自体でものをつくるか、見せたいものに光を当ててどう見せるか、という二つのやり方がある」という総評とともに締めくくり、今回のWEBINARを終えました 。

 

 

【日時】2022年8月5日
【会場】IALD Japan WEBINAR
【モデレーター】梅田かおり ※敬称略
【パネリスト】 馬渡秀公 原田武敏 中村美寿々 ※敬称略
【主催】IALD Japan