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ENLIGHTEN ASIA IN JAPAN2013の全てのイベントが終了後、あらためて参加したメンバーによる座談会 が開催された。日本の照明デザイナーが集まって開催されたはじめてのイベントはどのようなものだったのか?異なる立場で関わったメンバーからは、「アジア感覚の光」に対する課題から照明デザイナーの定義ま で、さまざまな議論が交わされた。(2013年4月16日 都内某所にて)
本日はENLIGHTEN ASIA IN JAPAN2013(以下ENLIGHTEN ASIA)に関わっていただいた皆様にお集まりいただきました。
異なった立場で関わられたと思うのですが、それぞれの視点でENLIGHTEN ASIAを振り返ってみていただけますか。
東海林 | 一言で言えば、「疲れた」(笑)。会期の4日間はあっという間に過ぎてしまったんだけれど、準備が大変だった。期間も長かったし、やるべきことも多かったから。無事に終了して、よかったなという安堵の意味を込めての「疲れた」です。言うことはいっぱいあるけれど、まずは。 |
近田 | それだけ? 何も言ってないじゃないの。 |
東海林 | いや、話しはじめると長くなるし、キツいことも出てくるかもしれないから。 |
近田 | ずるいのね(笑)。私は一番最初の準備会から参加していました。「よし、これでやろう」というところにいくまでが、けっこう長かったんです。やると決まってからは、手分けも早く、どんどんと進んでいきました。手分けした仕事が、担当者にぴったりはまっていたというのもあります。「やる」と決まるまでに、みんなが自分の意見を好きなだけ言ったのがよかったんだと思います。だいたい、多数決では「やらない」ほうに票が集まっていたんです。 もし今年このENLIGHTEN ASIAをやらなかったならば、個々のデザイナーが自分たちを磨くことはできても、照明デザイン界全体を磨くことはできなかった。IALD JAPANとしてみんなでやったことは個にもちゃんと戻ったような気がします。 |
中島 | 準備段階にはほとんど携わっていなかったので、なぜ私がこの座談会に呼ばれたのか、よく分からないのです(笑)。そのため第三者的な意見になってしまいますが、今回のこのイベントは予算も時間も限られた中で、よくここまでやったと感心しております。セミナーやパネルディスカッションなどの中で私はひとつしか参加しませんでしたが、パネルディスカッションを聴きに来てくれたある方が、このENLIGHTEN ASIAのパンフレットに載っている照明デザイナーたちを見て、こんなに照明デザイナーがいて仕事があるのですか、と聞いてくるんです。良くやっている人と何とかやっている人もいると思いますよと答えました。私なんかぎりぎりやっているほうだけれど(笑)。来場してくれた方たちも、これだけの照明デザイナーの仕事を見て、その成果に納得してくれたと思いますよ。 |
岡安 | 準備に関わっていないという点では、中島さんと同じです(笑)。セミナーにひとつ参加させていただいたんですが、実際に会場に来てみて、これは準備を手伝わなくて損したな、と痛感しました。同じ照明デザイナー同志でひとつのテーマについて語り合うというのは、酒の席ではあるにしても、素面でしかも聴衆はいるし、なかなか緊張感のあるものでした。 |
松下 | 私は関わるなら徹底的にやろうと思ったんです。資金に関する役を頂いたので、資金調達委員会というのを勝手につくり、自ら委員長に就任しました。まずお金がないと成り立たない。皆様のおかげでたくさんの方たちがスポンサーについてくださいました。まずはイベントが無事に終了したことを、本当に多くのスポンサーの方たちに感謝しています。これは最初に言っておかなければいけないことだと思います。私は準備段階から最後の京都のエクスカーションまで、すべて参加しました。終わってみればすごく楽しかった。 |
アジア感覚の光は見えましたか?
ENLIGHTEN ASIAでは、「アジア感覚の光」がテーマとして挙げられています。参加された皆さんは、その光がどのように見えましたか。
東海林 | ないですね。たぶん、みんなないと思う。「アジア感覚の光」を提示するイベントではなく、そこへ向かう第一歩のイベントなんだよね。まず、日本に近いアジアからの参加者がなかった。たとえば中国から、もっとバリバリの若手デザイナーが参加すべきだった。もちろん、日中関係を念頭におかなくてはいけないのですが。だから、今回は第一歩、やっとスタートラインについたと言うべきでしょう。「Asia」としたのは、IALDのグローバルな観点から見た時に「Japan」では狭すぎるのではないかと思ったからです。 |
岡安 | 東海林さんの言われるとおりですね。照明の世界は、デバイスが劇的に変わっていく中にあります。新しい技術を使って表現していくものと、今まで培ってきた表現と、両方合わせて日本の光、アジアの光になっていくんだと思います。そういう意味でも今後のための第一歩だった。 |
中島 | 「アジアの照明デザインショーケース」というシンポジウムがありました。面出薫さんがモデレーターで、5人の外国人デザイナーがアジアでの作品を紹介してくれて、とても興味深かったです。しかし「これがアジアの光」というものではなく、やはりインターナショナルなデザインになっていたように思いました。また、日本も含めてアジアなのに、特に欧米の人たちはどこか中国的な光を「アジアの光」と受けとめているのではないでしょうか。理解してもらうには、やはり時間をかけていかなくてはならない。 |
近田 | 出てくるものにそう差があるとは思っていませんでした。むしろ、何に興味を持っているのか、何を考えているのかが重要だと思いました。今回のイベントではいろいろなことが分かりました。ルイ・クレアさんが中国のプロジェクトを手がけた際、彼は彼の考える中国の光を表現しようとしました。しかし、それは中国の人に受けいれられなかった。照明の観点からいえば、中国はまだまだかもしれません。しかし、中国の人たちだってちゃんと自分たちの求めている光を持っている。そういうところに形だけ持ち込んでも駄目なんだということも分かって、面白かったです。 |
松下 | 私は20年前から東アジアの仕事をしており、そういう視点から、最後まで「アジア感覚の光」というテーマに抵抗があったんです。アジアと一言でくくるのには無理がある。サッカーのワールドカップ・アジア予選に出てくる国の中には、日本がアジアだと思っていない国がいっぱいあるでしょう。私たちのイメージするアジアは東アジアではないかと。西アジアや東アジアなど多様な国の集まりがアジアの総称です。だから「アジア感覚の光」と総括的にまとめてしまうのはどうなのかな、と思っていました。だから、私はイベントとしてのENLIGHTENはASIAではなくENLIGHTENJAPANで、IALDがIALD ASIAはどうかと提案したくらいでした。しかし4日間の会期を終えた今、それらすべての問題を飛び越えて「アジア感覚の光」でよかったと思っています。どのセミナーも内容が濃く、はじまる直前までの悩みが拭い去られたようです。 |
アジア、特に東アジアは経済分野だけでなくデザインの面でもスピードが速い。ENLIGHTEN JAPANといって日本だけで小さくまとまってしまうと、そのスピードについていけず、おいていかれてしまう。だから、ENLIGHTEN ASIAと広い視点にしたんですね。