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【S-3】未来夜景創発
『未来夜景創発』をテーマに、東京・京都・福岡の3都市でフィールドワークを行い、2060年の未来の都市や光がどのような変化を遂げているのか。日本国際照明デザイナーズ協会の40歳以下の若手照明デザイナーと学生のチームが未来の光の出来事を予測して、未来の夜景を描くセミナーです。
ダイレクターの松下氏から3都市のリーダー紹介(東京:大好氏、京都:高岡氏、福岡:増田氏)があり、今回モデレーターを務める大好氏にマイクが渡され、セミナーがスタート。大好氏は、この『未来夜景創発』の未来をどのように作っていくのかをリーダー3人で打合せ、2060年という時代設定をしてきたと説明。その後、ワークショップに参加してくれた学生と一緒に話しながら、未来の都市夜景を想像して描いていくことにし、そのツールとして生成AIの「Midjourney(ミッドジャーニー)」の活用を決めたと大好氏は話されます。
■東京
発表は東京チームからスタートし、湾岸・渋谷・浅草の3エリアを題材に未来の夜景を提案。湾岸エリアでは自発光する植栽が東京のスカイラインを形成し、空飛ぶ車の普及により、人々が行き交う様子が光の軌跡として映し出されます。次のエリア渋谷では、ヘアカラーやネイルカラー、テキスタイルなどで光をまとい、各々が輝くファッションカルチャーが展開。街には光が溢れ、流動的に、そして誘導的に広がっています。最後の浅草では、光を吸収するブラックホールライトにより浅草寺が建立された当時の暗闇が再現され、暗闇の中でしか得られない体験と感情があることを再確認させてくれました。
■京都
続いては京都チーム。未来の夜景を考えるにあたり、京都がどんな街なのかを理解するところから始め、「過去と今」「人と人」「自然と街」という対比から生まれる気配に魅力を感じているのではないかと考え、3つの明かりを提案。1つ目の「浮遊する明かり」は、小さな光の粒が一人ひとりに寄り添いながら、気持ちやシチュエーションによって光の姿や形を変えることで、人と人との関わりで生まれる気配を感じさせます。2つ目の「過去を呼び起こす明かり」は、過去の様子を見たい、知りたいと思った時に光が映し出され、かつての気配を呼び起こします。3つ目の「陰影蛍の明かり」は、京都に潜む心地よい暗闇に集まる人工蛍の明かりにより、陰影や暗闇の大切さ、良さを再認識させてくれます。
■福岡
最後の福岡チームは、都市部、ウォーターフロント、太宰府歴史地区の3つの場所の未来夜景を提案。3回のワークショップでは、絵を描くという行為に至るまでのストーリーをいかに綿密に作り上げるかに時間を費やし、未来というワードだけでなく、人口・自然環境・エネルギー・テクノロジー・経済の5項目の考え方に沿ってデザインを起こしています。都市部は、交通用パイプラインの車線が発光し、3DホログラムディスプレイやOLEDの明かりなど、様々な光に溢れる魅力的な街に。ウォーターフロントでは再生エネルギーを取り入れ、雨や植物、光が掛け合わさって自然と共存した暮らしを実現しています。太宰府歴史地区では、VR(仮想現実)とリアルを繋ぎ合わせ、光のテクノロジーが街並みや文化に活気を添えて、未来への保存へと繋げています。
発表を終えた3人のリーダーに、U40の照明デザイナーから見た学生の可能性についてどう思ったのか、ダイレクターの松下氏は問いかけます。大好氏は「未来に残したいものの価値、情報検索の仕方やデザインを引っ張ってくる引き出しの違いを感じた」と述べ、高岡氏は「いいところだけでなく問題を見る視点や、鋭い意見も結構あって、得るものが多かった」と述べます。増田氏は「年齢に関係なく、学生たちのアイデアをズバズバ言ってくる」ことに、過去の自分に反省する部分もありながら、非常に勉強になったと述べます。
同じツールを使い、3都市独自の視点で照明デザインの未来を表現することができ、ワークショップを通して照明の可能性を感じることができてよかったと大好氏が総評し、セミナーを締めくくりました。