Key Note
【S-1】自然から学ぶ
照明デザインの未来を考えるとき、風や太陽などの自然エネルギーにどう取り組むべきか。40年以上にわたり、自然豊かな兵庫県三田市にアトリエを構え、風や水、引力で動く彫刻を、自然観察と体験から生み出してきた新宮晋氏を迎え、自身の考えをお話しいただきました。
大阪・神戸のベッドタウンでもある三田市は、新宮氏がアトリエを構えた当時は、周辺は田んぼや畑ばかりで、夜は本当に真っ暗。蛍の光をはじめ、森に逃げ込んだ動物がこちらを見ている目が光っているのがとても印象的で、わずかな光がすごく大事に見える。この「暗闇の体験」が、新宮氏の中では重要なことだと話されます。
新宮氏はそんな三田市をPRするために『サンダリーノ』というキャラクターを考え出し、2023年9月には、風で動く3.5mほどのモニュメントを完成させました。このサンダリーノが世界中で人気者になるように、生涯の残りのエネルギーを注ぎ込もうと考えていると説明されます。将来に何を残すかを考える時代、年代に入り、2023年に大阪中之島美術館で開催されたレンゾ・ピアノとの2人展は『平行人生』と名付けた。奇しくも1937年生まれの2人が、ある日出会って、それから世界中に公共スペースを作ってきた。その辺に今回のセミナーに招待された理由があるのではないかと新宮氏は推測されます。
自身の経歴を振り返り「水と空気の虜になってやってきた」と話される新宮氏は、世界各地で風と水をテーマにした作品を制作されてきました。関西国際空港国際線の出発ロビーにある「はてしない空」は、35年来の付き合いとなるレンゾ・ピアノとの初プロジェクトで、空気の流れを視覚化して欲しいと依頼された作品です。以降も自身が暮らす三田市やイタリアやギリシャ、ウルグアイなど、様々な場所で制作された作品が紹介されていきます。
自身の創作活動について「地球のことを真面目に研究しながら、地球と楽しく遊んでいる」と話す新宮氏は、2000年に「地球のことが心配だ」と、地球上の最も特異な自然環境である6ヵ所を巡る『ウインドキャラバン』を計画。「そこで暮らす人々は、現代文明に溢れた生活をしている我々とは違って、自然にもっと密着した生活をしているのではないかなという気がして。未来の生き方、地球という星を大事にしながら生きていくには彼らから学ぶことも多いのではないか」と、21点の組み立て式の風彫刻を長さ6mのコンテナに納め、自身がアトリエを構える三田市からニュージーランド、フィンランド、モロッコ、モンゴル、ブラジルと地球の様々な場所を巡られました。その旅での現地の人々との文化交流が「私自身が地球のことでいろいろなことを学び、仕事を続けるエネルギーのもととなった」と新宮氏は話されます。
また、月の高度が低い夏は、冬よりも庭は格段に暗いが、それでも白砂はある程度の光を反射しており、これを数値で見ると、また室町期と江戸期での違いが見えてくると三谷氏は説明します。室町期の庭では冬から夏で70%ほど減少していますけれども、江戸期の庭では、減衰が50%ほどに抑えられているのがわかります。さらに室町期の竜安寺や大仙院の景観シミュレーションを見ると、月を受けて明るく輝いている場所は、白砂ではなく広縁になっているのがわかります。ところが、夏の間、詩仙堂や慈照寺では広縁にももちろん月がさしますが、白砂の面がしっかり白く光っていることがわかります。
最後に会場からの質問に応える形で、イタリアに縁のある新宮氏らしく、レオナルド・ダ・ヴィンチについて語りながら、2019年にフランスのシャンボール城で開催されたレオナルド・ダ・ヴィンチ没後500年記念の展覧会でレオナルドの亡霊と出会い語らった出来事などを、ユーモアを交えながら話され、講演を終えました。