Discovery of Lighting Design vol.2
国内外の照明デザインの現場を照明デザイナーがドキュメンタリータッチで紹介した動画を10月にPre-Eventにて事前配信。配信された4本の本編の内容をベースに、照明デザイナー松下美紀氏によるモデレーターでイタリア、インド、台湾でそれぞれ活躍するIALDメンバーをパネリストとして迎え、Enlighten Asia 2021のメインテーマである「照明のニューノーマルを探す」についてディスカッションを行いました。
最初のパネリストは、スイスのルガーノ大学で教鞭をとる傍ら、イタリアで照明デザイナーとして活躍するマルコ・パンデッラ氏。パンデッラ氏は都市プロジェクトで重視しているのは、人間をすべての中心に置くことだと述べ、それがビデオで紹介されたプロジェクトでは見事に成し遂げられていると評価しています。
二番目のパネリストは、台湾とオーストラリアで活躍中の若手デザインディレクター、ヤ フイ・チェン氏。チェン氏は、ランドスケープ照明、とりわけ長崎と金沢プロジェクトで、歴史や雰囲気、地元の人々の好みや特徴がデザインに反映されていることに感動したと述べ、地元の人々がデザインプロセスに深く関わっている点を評価。その一方で、若手デザイナーは大規模プロジェクトに参画する機会が少なく、クライアントの信頼を獲得するには人一倍の努力とデザインに対する哲学が必要であると指摘しています。
最後のパネリストは、インド・ニューデリーで活躍する照明デザイナー、ライナス・ロペス氏。ロペス氏は、市民の視点を理解すること、そして観光客や都市自体のアイデンティティを念頭に置きながら、住民にとっての快適な空間づくりと都市の文化・歴史を正確に理解することが重要であると言及しています。また、ビデオで紹介された若い照明デザイナーたちは、政府・産業界をデザインの対話に引き入れることに成功しており、「光のための光」ではなく、光を雰囲気やコミュニケーション、そして快適さに統合している点に感動したと述べています。
フリートークでは、モデレーターの松下美紀氏が問いかける形で、パンデミック後の照明のニューノーマルについて議論が展開します。
チェン氏は、光と影のバランスを追求することは新しい常識の一つとなっていると、面出氏の「光の断食」コンセプトについても言及。健康的な光環境を構築する挑戦が進むだろうと話し、パンデッラ氏も、省エネを目指すには夜を尊重することが重要であり、心地よい空間を演出できるのは照明デザイナーしかいないと話しています。また、ロペス氏は過去の歴史を振り返り、デザインの中心が生産主義から徐々に人間へ戻ってきており、数字重視のエネルギーシステムから、より人間的感覚を重視し幸福や平和にふさわしいものへと移行するだろうと話しています。
最後にチェン氏は、男性中心の照明業界において、女性の活躍をサポートする体制についても意見を述べ、パンデミック後はさらに女性の進出が加速することを願っていると締め括りました。
Profile
マルコ・パランデッラ
照明デザイナー
Lighting Design Workshop
ヤ フイ・チェン
照明デザイナー
Light Poetic International Lighting Designers
ライナス・ロペス
照明デザイナー
Linus Lopez Lighting Design Consultants
モデレーター 松下美紀
照明デザイナー
松下美紀照明設計事務所