星空と自然環境に配慮した光環境改善
美しい星空を保護する優れた取り組みが行われている地区として、国際ダークスカイ協会の「星空保護区」認定を取得された、東京都・伊豆諸島の一つ神津島と岡山県井原市の山あい・美星町地区。「星空保護区」認定を取得するため、区域内のほとんどの防犯灯・道路灯が上方光束比0%、電球色の光害対策型に交換され、集落の雰囲気は一変したそうです。神津島村から小川徳柾さん、美星町からは藤岡健二さんをお迎えし、星空と自然、住民生活の共存を目指した動機や取組の様子についてお話をうかがいました。
神津島の取り組みについて小川氏は次のように話します。国際ダークスカイ協会東京支部と東京都の協力により、光害防止条例の制定を行い、同時進行でその条例に合う街灯照明を岩崎電気株式会社のご協力で商品開発、照明交換施工をし、2020年4月から7月にかけて村落内のすべての防犯灯を含め、島内の584機の屋外照明の83%の交換に成功しました。プロジェクト決起当初は心配されていたクレームもなく、村内でも星が見えるようになったと評価され、結果として住民からも多くの賛同を得ることができています。そのことから今までの街灯の明るさが、もしかすると村民も必要としない明るさだったかもしれないと気づくきっかけになったと小川氏は言います。
一方、美星町の取り組みについて藤岡氏は次のように話します。美星町は1989年に国内初の光害防止条例を制定した町として、30年以上にわたり光害に対する取り組みや星の郷としてのまちづくりを進めてきました。しかし、近年の街灯照明のLED化により、以前より星が見にくくなったという声から星の郷としての危機感を覚え始めました。そんなときに星空保護区の存在を知り、これからの観光をはじめとした地域活性化には世界基準の評価であるこの星空保護区の認定が必要だという考えに至ったと言います。
また、美星町では条例改正や照明交換をする前段階である2019年11月に、モデレーターの越智信彰氏が藤岡氏の協力のもと、住民アンケートを実施しています。光害防止条例が施行されていることは住民として誇りに感じますかと言う問いに対して、約8割の方が大いに誇りに感じる、または少しは誇りに感じるとの回答で、地域住民からも支持されていることがわかりました。しかし一方で、交換後の照明の明るさを暗いと感じている方がいるのも事実で、藤岡氏は、引き続き住民の方の理解を広げていく努力を続けていくと話しています。
最後にモデレーターの越智氏は、星空保護区の取り組みは幸いにもメディアやWEBで取り上げられる機会も増え、こうした活動を通して光害の意識の高まり、環境に配慮したこれからの照明のあるべき姿について、多くの人が考える機会につながればと話し締め括りました。
Profile
小川徳柾
課長
神津島村産業観光課
藤岡健二
課長補佐 兼 観光交流係長
井原市役所建設経済部観光交流課
モデレーター 越智信彰
東洋大学准教授
国際ダークスカイ協会東京支部