ENLIGHTEN ASIA 2021 in japan

日本では、2011年の東日本大震災以降、一段と省エネルギーとLED化の動きが強まっています。それにより、何が変わったのか、よくなったことは何か、逆に悪くなったことはないのか。それを知るため2021年7月IALD Japanメンバーを対象にLEDに関するアンケートを行い、34名から回答を得ました。このセミナーでは照明デザイナーの飯塚千恵里氏(飯塚千恵里照明設計事務所)がモデレーターを務め、アンケートをもとにメンバーがさまざまな意見を述べながら、LED照明について考えます。

 

まずは、LEDのメリットについての考察からセミナーがスタート。

「器具寸法について」岡本賢氏(Ripple design)はLED光源のコンパクト化と高効率化が進み、従来光源では考えられないほどのコンパクトサイズでありながらハイパワーな照明がたくさん増え、サイズに注目してみるとLEDは劇的に進化を遂げていると述べています。

 

「演色性について」パク・ホンジュ氏(株式会社松下美紀照明設計事務所)は、昔は蛍光灯や白熱灯だけだったことを考えれば、今はさまざまな色温度が選択できる上に調光調色もできるようになり、照明プランを考えるにはすごく便利になったと言います。さらに、IoTとの連携で今までできなかったLED体験ができるようになるのではと期待しています。

 

「納まり、小型化、長寿命化について」戸恒浩人氏(有限会社シリウスライティングオフィス)は、LEDになることで小型化、長寿命化、そして少ないエネルギーで照明を点けられるようになり、屋外照明が非常に豊かになったと述べ、一般の人が照明の大切さに気づくチャンスが増えたと言います。

 

続いてはLEDのデメリット、悪くなったことについて考察しています。

「器具のグレアについて」永島和弘氏(合同会社チップス)は、LEDは前面方向にしか光が出ないためにグレアコントロールが全くできなくなり、かつてのハロゲンランプのときに感じた制御するワクワク感がなくなったのが個人的には残念に思っていると述べています。

 

「調光について」田中謙太郎氏(株式会社ライティングプランナーズアソシエーツ)は、照明は空間で過ごす人にとって快適であるかどうかが大切だと言います。さまざまなメーカーのLED照明があり、それぞれの照明が調光器や制御システムとの相性によって点灯するタイミングがバラバラになるため、もう少し使う側の立場で、滑らかに調光できるのが当たり前になると良くなっていくのではと述べています。

 

「器具交換について」現在のLED照明では丸ごと交換するのが一般的だと言う久保隆文氏(株式会社Mantle )は、LEDの小型化が進めば、例えばダウンライトであればΦ100で計画したものが10年後には同じ明るさでも更に小さくなっている可能性もあり、天井に大きな穴が残すことになる。10年後に同じ照明器具が残っているという保証もなく、器具を選定する立場としては不安がある。将来のメンテナンスを見据えた器具開発が大切だと述べています。

 

「器具の再利用について」永島氏は、LED照明は光源と器具が一体なものが多いため、光源の交換時には器具も新しいものに入れ変えなくてはならず、LED照明は産業廃棄物になっていると言います。簡単に分解できて再利用できる仕組みをつくるなど、処分しなくて済むようにしなければ、循環型社会を目指す今の時代にそぐわないのではと指摘しました。

 

アンケートでは、身近な場所の良くないと思うLEDについても聞いており、約半数のメンバーが苦言を述べていた「街路灯、防犯灯の眩しさと高い色温度について」戸恒氏は、公道における街路灯は、使用する機器がほぼ決まっており、とても残念な光を浴びせ続けられている現状が事実としてあると言います。日本の公共空間のデザイン性の低さというものは、諸外国からみても非常に寂しいものがあると、常日頃より思っていると述べています。

 

最後に飯塚氏は「文化が成熟するとき照明環境は豊かになります。私たち照明デザイナーはより豊かな照明環境を作っていきたいと考えています。あなたにもできることがあります。私たちも一緒に考えたいと思っています」と述べ、セミナーを締め括りました。

Profile

飯塚千恵里

照明デザイナー

飯塚千恵里照明設計事務所