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【EL10】建築と光環境を繋ぐデジタルデザイン

コンピューター技術が進化し、設計技術も年々新しくなっている今、デジタルデザインによって、建築空間と光環境の情報を同時に扱うことによる可能性を、竹中工務店設計部アドバンスデザイングループのリーダーを務める花岡郁哉氏が事例をまじえながら紹介しました。

コンピュータを使った設計技術を活用しながら、建築設計に取り組んでいる花岡氏は、「建築と光環境を繋ぐデジタルデザイン」というテーマを受け、コンピュテーショナルデザインと、ビジュアライゼーションについて、建築設計の立場から話を進めていきます。
まず、コンピュテーショナルデザインということをごく簡単に説明すると、基本的には「膨大な情報量」を「迅速に計算」して「アウトプット」できるということ。コンピュテーショナルデザインを活用した事例として、建物の形状そのものを光環境で決定しようというプロジェクトの紹介がありました。湾曲する壁に光を当てながら取り込む、間接光だけに包まれたオフィスです。今まで別々に検討していた明るさ、熱負荷、開放感といったクライテリア(設計基準)を総合的に評価し、最適解を導き出しています。

また、コンピュテーショナルデザインの普及に寄与したビジュアルプログラミングについては、例えば、モデリングソフトのRhinoceros(ライノセラス)とモデリング支援ソフトのGrasshopper(グラスホッパー)を連携することで、変数の関係性が担当者で共有され、「再現性」が高まるというのが、建築でプログラミングを活用する際のメリットだと花岡氏は考えています。

次は、ビジュアライゼーション。コンピュータを使ってシミュレーションしたものを、どうやって見せるかという話になります。最近はでは、VR(Virtual Reality=仮想現実)やMR(Mixed Reality=拡張現実)の活用が進んでいます。VRでは、光環境のシミュレーションを、建築のBIMモデルを活用しながら簡単に行えるソフトなども出てきています。迅速で簡単なシミュレーションから、より高度で詳細なシミュレーションまで、目的に合わせて適宜使い分けることになります。MRでは、ヘッドマウントディスプレイというサングラスのようなところに映像が表現されるので、現実の空間を見ながら、設計情報を重ね合わせることが可能です。建設現場に設計情報を重ねる、などの試みがありますが、それ以外にも、たとえば設計段階で、会議テーブルの上に建築モデルを出現させ、シミュレーション結果を表示しながら多人数で議論することも可能です。

最後に、日頃からビジュアライゼーションのソフトやツールを使用している花岡氏は、バーチャルで体験できるものとリアルな空間で体験できるものとの差は、まだあると感じている。ただ、補助ツールとしては非常に有効で、光環境デザインのクオリティを上げていく方法にはなると考えていると結びました。


【日時】2019年03月07日 10:00-11:00
【会場】東京ビッグサイト 会議棟1階 102会議室
【プレゼンテーション】花岡 郁哉 氏(竹中工務店 東京本店設計部副部長)
【モデレーター】戸恒 浩人 氏(シリウスライティングオフィス 代表)
【主催】日本国際照明デザイナーズ協会、日本照明工業会、日本経済新聞

Profile

花岡郁哉

2001年 竹中工務店入社
現在 同社東京本店設計部副部長
兼アドバンストデザイングループ長

主な受賞歴
グッドデザイン賞、BSC賞、日本建築士会合会賞優秀賞、日本建築学会作品選集新人賞、東京建築賞最優秀賞

戸恒浩人

建築・環境照明そして都市計画に至る豊富な経験を生かし、都市照明や商業施設などの演出性の高い照明デザインから、住宅や病院などの心地よい光環境のデザインまで、幅広く照明のデザインを手がける。