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【EL06】SDGsと照明:2030年にわれわれが実現すべき社会と光の役割

国連の持続的開発目標(Sustainable Development Goals:以降SDGs)の分野で、日本のトップランナーであるSDGパートナーズ CEO の田瀬和夫氏と、今回のナビゲーターであるIALDの理事で、照明デザイナーである小西美穂氏が、SDGsをベースにした照明の向う方向性についてパネルディスカッションしました。

まず、田瀬氏は、SDGs の経緯と、それがどうビジネスに役立つのかを紹介しました。SDGs は、2015年9月25日に文書としてまとめられ、国連加盟国193の全会一致で決定した文書で、2030年にこういう社会を次の子どもたちに残したいということを明確にした、奇跡的な文書だと田瀬氏は言います。これに法的拘束力はないにもかかわらず、今、世界中の経営者やトップリーダーがSDGsをベースにして、ビジネスそのものを再構成しようとしています。

日本でも日々、イノベーションという言葉を聞かない日はありません。しかしながら大半のイノベーションは、対症療法に近いものだと言います。例えば、疲れたら栄養ドリンクを飲んで、また働く。このような帰納法的なイノベーションは、それだけでは問題の解決にはなりません。その逆にあるのが、演繹的なイノベーションで、デザイン思考とも言われます。例えば新しい製品を作るとか、2050年にどういう会社でありたいのかを考えるときに、何年までに何をしなければならないと明確に決める「時間的な逆算」と、人間がありたい姿から考える「論理的な逆算」というSDGsによるデザイン思考と、帰納法的なシステム思考を組み合わせる取り組みが様々な企業で始まっています。

パネルを受け取った小西氏は、どのようにSDGsと照明デザインを考えていくかということを、個人的な解釈も踏まえて話されました。持続可能な光とは?と考えると、5つの価値があると小西氏は言います。まず一番上に来るのは「感性」。次に「美しさ」。そして、「健康」と「ファンクション(機能)」、最後に「エコロジー(環境)」。こういった5つの価値がSDGsのコミットメントに密接にかかわってくると私たちは体系づけており、心身の健康や自律神経、ホルモンバランスを整えられるような照明計画、つまり、ヒューマンセントリックライティング、サーカディアンリズムに直結していくと。また、これからの光とは何?と考えると、健康をつかさどるものであり、感性の大切さを改めて思い出すもの、見出すものではないかと考えています。さらに、住宅のような個人レベルで光をコントロールが可能になってきた中で、一人ひとりがどのように光と向き合うのかというところを、照明デザイナーとして啓蒙していかなければならないと、SDGsと向き合う中で強く感じると小西氏は言います。

最後に、田瀬氏はこう結んでいます。2030年にはどういう光を、あるいはコントロール、選択肢を次の世代の人たちに提供するかというのは、とても重要な仕事になるかもしれないと。

【日時】2019年03月06日 14:15-15:15
【会場】東京ビッグサイト 会議棟1階 102会議室
【プレゼンテーション】田瀬 和夫 氏(SDGパートナーズ CEO)
【モデレーター】小西 美穂 氏(ALG(建築照明計画)ディレクター)
【主催】日本国際照明デザイナーズ協会、日本照明工業会、日本経済新聞

Profile

田瀬和夫

外務省(1992〜2005)、国際連合(2005〜2014)、デロイトトーマツコンサルティング執行役員(2014〜2017)を経て2017年にSDGパートナーズを設立、現在代表取締役CEO。

小西美穂

日本女子大学卒業、ALG入社。渡英、AAスクール(英国建築協会付属建築学校)修了、ロンドンFoster+Partners勤務。2007年帰国、ALG照明デザインディレクター。2008年 銀山温泉 藤屋旅館でIALD “AWARD OF EXCELLENCE” 最優秀賞受賞。東京アメリカンクラブなど。