大林賢史
2002年東京医科大学卒業、東京女子医科大学循環器内科入局後、2010年奈良県立医科大学住居医学講座助教を経て、2017年より現職。光環境の健康影響に関する疫学研究を主宰。医師、医学博士。専門は疫学、循環器内科。
照明が身体に及ぼす影響は昔から研究されていますが、その研究結果は今でも有効なのか。またLEDが光源の中心となる時代になって、新たに考えなければならない健康に関する事柄は何かなど、健康と照明に関する最新情報を、光と健康に関する研究をしている奈良県立医学大学医学部准教授の大林賢史氏の解説で紹介されました。
日常生活の中で浴びている光は、いろんなところであります。タブレットだとかPCだとか、いろんなデバイスから光が発生されて、暴露するところというのはどんどん増えているというのが現代社会だと大林氏は言います。そして、夜がどんどん明るくなっている現在、ライトポリューションという、公の害ではなくて光の害、「光害」という問題があります。動植物学者は、このライトポリューションに対して、問題提起していましたが、光の人間への影響というのはあまりわかっていない、研究されていません。そもそも人はどのような光環境で寝ているのか。こういう基本的な問いに対しても我々はこれに正確に回答するデータを持ち合わせていないというのが現状です。
そこで、大林氏は、光が健康に影響しているのかを知るために、リアルワールドの光環境、健康影響を調べる、平城京スタディと名付けた住環境研究(Housing Environment Study)をスタートさせます。実際、何をしているかというと、腕時計型の照度センサーをつけて昼間は生活してもらい、夜間は寝室に据え置き型の照度センサーで明るさを測ってもらう、全戸訪問調査です。そこで取れた、睡眠と関連するホルモンであるメラトニンや睡眠の質、血糖値、うつといった指標をもとに、光がもたらす人間、健康への影響を研究しています。
医学的な立場から言えることは、当たり前ですが、昼間はたくさん光を浴びて、夜は浴びない。大林氏は、こういう地球上の環境下で進化してきたので、この光環境に適応するような生体リズムの大本、24.2時間のリズムを刻むサーカディア(概日リズム)タイミングシステムを持っているわけで、健康にいい光というのは自然界にヒントがあると言います。
最後に大林氏は、光は照度や波長だけではなく、タイミングが非常に大事で、目にいかに夜の光が入らないようにするかとか、昼の光はたくさん入るようにするかとか、そういう技術的な側面も考慮して照明をデザインすると、健康に寄与するような可能性があるのではないか。このことを少しでも考えて照明をしてもらえると、自身の発表に意義があると結びました。
【日時】2019年03月06日 13:00-14:00
【会場】東京ビッグサイト 会議棟1階 102会議室
【プレゼンテーション】大林 賢史 氏(奈良県立医科大学 准教授)
【モデレーター】菅原 千稲 氏(フィラメント 代表)
【主催】日本国際照明デザイナーズ協会、日本照明工業会、日本経済新聞
大林賢史
2002年東京医科大学卒業、東京女子医科大学循環器内科入局後、2010年奈良県立医科大学住居医学講座助教を経て、2017年より現職。光環境の健康影響に関する疫学研究を主宰。医師、医学博士。専門は疫学、循環器内科。
菅原千稲
照明デザイン事務所ワークテクトを経て2010年に独立。フィラメントを設立し現在にいたる。