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【EL13】大規模都市における夜景管理のための3レベルシステム ケーススタディ:テヘラン

アーバンデザイナーのエルハーン・スリー氏と照明デザイナーのケイヴェ・アーマディアン氏が、イランの首都テヘランを例に、それぞれの立場から大都市における照明デザインのあり方を紹介しました。

スリー氏は、都市の景観とは、単に物理的に発展したビルやインフラではなく、それぞれの都市が象徴する非物理的なものを伝えるための媒体だと言います。例えば、バチカンのサン・ピエトロ広場の画像には「歴史」や「カソリック」を、ドバイの高層ビル群の画像には「テクノロジー」、ワシントンDCの画像には「政治の中心」といった各都市の象徴的意義が読み取れます。その意味で、都市の景観とは、人と建築が展示された無償の「ギャラリー」もしくは、街を歩く人々が演者であると同時に観客である「劇場」のようなものであり、その魅力次第では投資や観光客を引きつける資源となり、結果として都市の経済を潤し、世界的地位を高めると考えます。そのような観点から、都市の夜間照明、特にストリートレベルでの体験の重要性を、伝説のアーバンデザイナー、ジェーン・ジェイコブズを引用してスリー氏は強調します。「ストリートは、街を訪れる人の印象に残る。つまらないストリートはつまらない街、面白いストリートは面白い街として捉えられる。」

https://en.wikipedia.org/wiki/File:St_Peter%27s_Square,_Vatican_City_-_April_2007.jpg

 

 


https://www.lukas-petereit.com/asia-trip-2017-4-days-for-a-perfect-skyline-shot-in-dubai/

 

アーマディアン氏は、照明デザインにより都市の夜景を魅力的にする上で、1,400万人近い人口を誇るテヘランのような大都市の照明計画は、「マクロレベル」、「中間レベル」、「マイクロレベル」の3つのレベルから検討される必要があると言います。「マクロレベル」では、都市全体を俯瞰し、歴史地区、ビジネス地区、住宅地区などのような都市の中の「ゾーン」の境界を定義します。「中間レベル」では、それぞれの「ゾーン」ごとに照明を検討・計画します。例えば、ビジネス地区において、夜間の人口が大幅に減少するため危険な雰囲気が漂ってしまう場合は、照明デザインによって賑わいと安全性をもたらすような方法を検討します。その際、夜の照明が及ぼす木々や動物(街路樹にとまる鳥など)への光害についても配慮する必要があります。「マイクロレベル」では、個々の建物の規模でのプランニングです。

このように、大都市の照明計画では、「マクロレベル」だけで考えるのではなく、都市を分割し、各ゾーンおよび専門分野ごとに照明に対するアプローチを検討するとこが重要だとアーマディアン氏は考えます。


【日時】2019年03月07日 13:00-14:00
【会場】東京ビッグサイト 会議棟1階 101会議室
【プレゼンテーション】エルハーン・スーリ 氏(シャヒードBeheshti大学 シニアアーバンライティング研究員)、 ケイヴェ・アーマディアン 氏(ノーサフォームライティングエンジニア マネージングディレクター)
【主催】日本国際照明デザイナーズ協会、日本照明工業会、日本経済新聞

Profile

Elham Souri

Elham Souriは都市照明デザイナーで、都市計画学の博士号を有しています。テヘラン市の照明デザインプロジェクトの評価を担当するLighting Committee(照明委員会) のメンバーでもあります。また、Tehran LMP(テヘラン照明基本計画) をはじめとするいくつかの照明基本計画にも携わっています。

Kaveh Ahmadian

Kaveh Ahmadianは現在、ベルギーのKU Leuven(ルーヴァン・カトリック大学) でLight&Lighting Laboratoary(光・照明研究所) の博士研究員を務めています。イランの照明ソリューションプロバイダーNoorsaform Lighting Engineering社の創業者兼CEOで、Iran Lighting Design Conference(ILDC:イラン照明デザインカンファレンス )の創設者でもあります。