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イベントレポート

2023.07.19

第1回 IALD Japan ライトトークサロン「調光の未来、光の未来」

「IALD Japan WEBINAR」は「ライトトークサロン」に名称変更され、その第1回が開催されました。

今回のセミナーは2部構成で実施。第1部のテーマは「LED調光の今」、第2部のテーマは「調光の未来、光の未来」です。

モデレーターは田中謙太郎氏(株式会社アンバー)。
パネリストとして、第1部では高橋裕忠氏(PMC株式会社)、中畑隆拓氏(スマートライト株式会社)が、第2部では前出の2名に加えて小堀哲夫氏(株式会社小堀哲夫建築設計事務所)、小玉敦氏(株式会社久米設計)、関根雅文氏(株式会社日建設計)も登壇されました。

第1部で高橋氏はまず「エジソンの白熱電球から始まり、その後約60年ごとに蛍光灯、LEDといった新たな光源が生まれてきた」と光源の歴史を簡単に説明し、光源の発展とともに位相制御やPWM、DALIへと調光技術が進化してきたと解説。またDMXについても触れ「DMXはもともと舞台装置に使われていた技術。今はオフィスや店舗でも使用され、照明や映像、音などをトータルでコーディネートする時代になってきた」とコメントしました。さらに、LEDと他のものがネットワークでつながる「スマート化」にも触れました。この日一番言いたかったこととして「光や動作など、使う人が本当に求めているスマートなものになっているか?」と問いかけました。自分たちの都合で「使えるのはこのメーカーだけとか、海外の製品は使えないとしていたらスマートではないのかなと(笑)。僕らも努力をして、デザインも含めて本当にスマートと思えるものにしていきたい」と語りました。

続いて中畑氏は、照明の制御システムを設計する場合、照明メーカーに対して「御社の照明はAI(人工知能)とつながりますか?」と聞いてほしいと話を切り出しました。アレクサやポケトーク、スマホの顔認識機能を例に挙げ、AIは思っている以上に生活に溶け込んでいると説明。今まで人感センサー、照度センサーで照明を制御していたため「人がいるかいないか」「明るいか暗いか」ということしかわからなかったが、例えばカメラとAIと照明がつながることで、こういう時には問題が起きるから照明をコントロールしようということができるようになってきたと。

また、プロジェクト内で色々な設計を結ぶマスターシステムインテグレーターの役割が今後重要になるとして、照明と様々なものがネットワークでつながることで今までにない価値を生み出していくことができると語りました。

第2部では最初にパネリストが「関わられている現場で調光や照明に苦労されていますか」という質問に答えました。

まず、小堀氏は自身が携わっている舞台や劇場の照明について触れました。「建築の照明は機能照明ですが、舞台の照明は人間を美しく見せるもの。だから舞台照明が圧倒的に優れていると思う」と。その後、田舎の実家で撮られた写真や、趣味で登られたという槍ヶ岳の写真を示し、「光がグラデーショナルに変わっていく様が好き。そんな光がほしい」と語られました。そして、「調光って面倒くさいですが、第1部でネットワークの話を聞いて人間の感覚に馴染む光を作れるんじゃないかと思った」と。

また、日光を大切にして設計をするという小堀氏。ダウンライトはできるだけ付けたくないと話され、あるオフィスを紹介。そのオフィスでは、ダウンライトの代わりに舞台で使う巨大な投光器と動かせるタスクライトを用いたそうです。タスクライトにはコンセントがついているので、チョウチンアンコウに引き寄せられるようにPCを持った人が光に集まるというお話もありました。

小玉氏が最初に紹介したのは、お台場の日本科学未来館です。2001年に最先端の科学を発信しようとして、当時照明器具に使われていなかったLEDを使い、風力発電と連携させたプロジェクト。「ガラスのファサードをいかに美しく見せるかに苦労した」と話されました。モデレーターは「青という出力がいちばん強い色を選び、風を視覚化した事例ですね」とコメント。

次に紹介されたのは、すべて膜天井にしたある本社ビルのオフィス。「昼は自然光、夜は人工光」というテーマでまとめられた事例です。天井が高いことやバッファーゾーン(緩衝エリア)を作ったことで、天井や窓から入るグレア(まぶしさ)があまりないそう。オフィスを使う社員に行ったアンケートでは、「サーカディアンリズム(生体リズム)が整って体調が良い」「朝の光から夕方の赤い色目に色が変わっていくところがとても良い」といったポジティブな反応が多かったと話しました。

関根氏は3つのトピックについて語りました。

1つ目は、日建設計オフィスの2、3階フロアで、リニューアルされた「PYNT」と呼ばれるスペース。外部の方を招いてワークショップなどを行う空間です。ゾーンごとに調光機能を変えたり、照明の位置を変えたりすることができるそう。また、照明の色味が異なる複数のブースのなかからそのときの気分に合ったものを選ぶことができるというジェンダーフリートイレについてもご紹介いただきました。

2つ目は某大学です。アトリウムに面した場所の照明の色を季節や時間帯で変えています。照度が低くても、雰囲気が悪くならないようにされているそうです。また、地下の学習エリアは自然光が入らないため、LEDの色温度の組み合わせで自然光が入ってきているかのように工夫されています。

3つ目は、日建設計が開発した「Asapp」というアプリ。脱炭素を目指すため、一人ひとりの行動改善を促す目的で作られ、アプリをスマホに入れると各個人がある期間に出す二酸化炭素の数値がおおよそわかるそうです。人の位置情報から、オフィスで人が少ない所にいる人には「人の多いフロアに移ったほうが省エネになります」というメッセージが送られ、実際に移るとCO2削減になりポイントがもらえる仕組み。溜まったポイントでオフィス内のカフェでコーヒーが飲めるという取り組みが紹介されました。

最後に「調光の未来、光の未来」に期待する事は?という問いがパネリスト全員に投げかけられました。

中畑氏は「横のつながりを大事にしたい」。高橋氏は「目の前の仕事ではなく、光を使う人を見据えて取り組みたい」。小堀氏は「制御が重要になる一方、自分が光をコントロールできる環境も必要」。小玉氏は「カーボンフリーには制御が力になる。プランナーが計画する時から達成する方向を考えられればいい」。関根氏は「建物の使われ方が変化しても、それにアジャストできる設備設計が重要になる」と、それぞれコメントし、今回のライトトークサロンを終えました。

 

【開催日】2023年7月19日

【会場】 東京デザインセンター クラフテックギャラリー

【モデレーター】田中 謙太郎

【パネリスト】 小玉 敦、小堀 哲夫、関根 雅文、高橋 裕忠、中畑 隆拓

【主催】 IALD Japan