アジアの都市夜景・その現状と未来
学生ワークショップの提案を受けて、今後アジアの夜間景観がどのように進化していけばよいのかについて考えるパネルディスカッションです。照明デザイナーの面出薫氏がモデレーターを務め、各学生チームの指導教員の川添善行氏(日本・東京)、イノ・チャ氏(韓国・ソウル)、ザン・シン氏(中国・北京)、アマデップ・ドゥーガー氏(インド・ウドゥピ)、遠藤賢也氏(シンガポール)、アチャラワン・チュタラート氏(タイ・バンコク)がパネリストとして参加しました。
ディスカッションは面出氏からの3つの質問を中心に展開して行きます。一つ目の質問は「6都市の学生の提案をどのように評価したか」というものでした。これに対し、ドゥーガー氏(ウドゥピ)は、光の英雄と犯罪者とに分けて考えたことは照明デザイン初心者の学生たちには有意義な課題となったとのコメントや、コロナ禍でグループワークが難しく苦労をしたという声も上がりました。コロナ後の社会についてそれぞれ提案している点や、各提案に地域性が出ていた点についても高評価でした。
2つ目の質問は「自分の都市について照明の観点でどのように評価しているか」というもので、五つの指標(防犯・安全性、都市景観美、快適性、環境配慮)をもとに地域の個性について評価し、各パネリストが事前にレーダーチャートにしたものを表示しながら解説しています。
川添氏は、東京の治安は良く、十分な照明が用意されているので安全性は満点に評価したが、今後は量より光の質を重視し、地域性も考慮していく必要があると言います。イノ氏は、ソウルの夜景に対する規制が厳しいため画一的な照明になっており、ソウルを取り囲む美しい自然が活かされていないと指摘しています。遠藤氏は、シンガポールは夜景が魅力的な一方、光害に配慮しなくてはいけないと話し、ザン氏も北京はとても美しい都市であるが、快適性や環境配慮が足りないとコメントしています。アチャラワン氏は、バンコクは個性的で暗いところも良いと思う一方で、安全性の面では人によって感じ方が違うとも発言しつつ、快適性や環境配慮について現在試行されている点は評価できると話しています。アマデップ氏は、ウドゥピについて個性や安全面、快適性では満点をつけた一方、都市デザインという概念が未熟なため都市の美しさという点ではもっと改善の余地があると発言しています。
最後に「アジアの夜景に今後期待すること」についての質問には、地域の個性を出すことが大切だという意見や、照明の質に対する認知度をあげる必要があること、テクノロジーを生かして今後の気候変動や災害に対策していく必要があることなどが挙げられました。川添氏からは、アジア各都市に共通するモンスーンに対する夜景、建築、照明の在り方についての発言もありました。また、コロナ禍の暗い世の中で様々な提案によって明るい未来が見えてきてよかったという意見や、アジアの若者同士が交流することで様々な視点を学ぶことができ、今回のワークショップのように有意義な連携ができるとの見解が共有されました。
Profile
アチャラワン・チュタラート
照明デザイナー
キングモンクット工科大学トンブリ校
アマデップ・ドゥーガー
照明デザイナー
マニパル・スクール・オブ・アーキテクチャー&プランニング
イノ・チャ
照明デザイナー
成均館大学
遠藤賢也
ランドスケープアーキテクト
シンガポール国立大学
川添善行
建築家
東京大学
ザン・シン
照明デザイナー
清華大学
モデレーター 面出薫
照明デザイナー
ライティング プランナーズ アソシエーツ