2030 アジア夜間景観プロポーザル
プレイベントで配信されていた『「アジアの都市夜景 / 今と未来」学生ワークショップによる調査と提案』で、アジアの6都市(ウドュピ(インド)、シンガポール、バンコク、北京、ソウル、東京)の学生がそれぞれの街の夜間景観について調査・分析をまとめ、近未来である2030年もしくは2050年に向けてどうなっていてほしいのかプロポーザルを作成。最後に視聴者に、どのプロポーザルがよかったかを投票してもらうオンライン開催ならではのセッションとなりました。
まずウドュピ(インド)チームからの発表は、コロナウイルスによるパンデミック以降、天災や紛争などの災難に見舞われることを想定し、2050年に3体の救世主が降り立ち3都市を救うというユニークなストーリー仕立てで展開されました。都会的なマニパルにはバイオ照明、サイネージ、通路サイネージなどで交通ターミナルの照明を提案。歴史的建造物の多いウドゥピには温かみのある空飛ぶスマート照明や、インタラクテブなファサード照明などによる文化の保全と教育促進。海面上昇やその他の自然災害が危惧される沿岸部のマルぺでは、海中歩道や海洋生物のホログラムショーを通じて海洋環境の保全と新たな観光資源を作ることが提案されました。
シンガポールチームからは、国内3地区についての調査報告と提案が行われました。居住エリアであるチョンバル地区には、温かみがあり公共空間がより快適になるような照明を。歴史地区のチャイナタウンには、文化遺産や宗教を尊重したライトアップなどを提案。商業エリアであるオーチャード通りについては大小様々なスケールでの照明演出とともに、将来的にはWi-Fiを凌駕するとも言われる光を使った通信技術Li-Fi(ライファイ)の使用や歩行者天国のライティングイベントなどが提案されました。
続いてバンコクチームからは、イスラム教寺社があるカジーン地区への提案として、レーザーライティングや水に浮かぶ柔らかい照明で、夜は暗くて近寄り難い寺院やリバーフロントの問題を解決するとともに、お祈り空間を光の輪で囲むライトアップなどが提案されました。また、アート地区であるチャロンクン地区には、桟橋からのアクセス道や壁画アートへのライトアップなどによる安全性の向上が提案されました。
4番目の北京チームからは、公衆トイレを町のランタンとして光る壁で作る提案や、オフィス労働者が夜リラックスできるようにAIで色温度調整を行う照明プランが提案されました。また、自動運転車と従来車が混在する車道や車内のライティング、さらにターミナル駅のライトアップやドローンを使ったライティングなど、モビリティ空間に対するユニークな提案もありました。
5番目のソウルチームは、コロナ禍以降、人口が集中していたソウルから周辺部に人々が移住するというストーリーを展開し、ソウルの未来予想をしています。行政区の境界が変化すること、公共空間が失われること、人工照明が自然光に取って代わることに着目し、2050年までコロナ禍が収束しないという最悪のシナリオを想定し、そのような状況下でもライティングが人々の心を癒し、分散した人々のつながりを保つものとして期待するという言葉で締めくくられていました。
最後の東京チームは、道路照明に着目。安全上の理由から広範囲を均一に照らす街灯や防犯灯などは人々に不快感をもたらしますが、その解決策として、自転車のタイヤを丸く発光させて光を小型化・分散化・可動化する方法を提案。さらに道路を上から照らすのではなく路面そのものを発光させる方法や、ビルの裏側ではなく道路に面したアクセスのよい場所に街灯の延長となるべく自転車のシェアリングステーションを設置して憩いの場とすることが提案されました。
セッション終了後に行われた視聴者による投票(62名)の結果、ウドュピ(インド)のプロポーザルが1位に選ばれました。