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イベントレポート

2021.08.6

のぞいてみよう!照明デザイン vol.3

2021年8月6日に「のぞいてみよう!照明デザインvol.3」と題したWEBINARが開催されました。このWEBINARは照明デザインに興味を持つ学生に向けたイベントで、照明デザイナーの職能や仕事ぶりについて、実際に現場で活躍している照明デザイナーが様々なエピソードを交えて紹介します。今回も、照明デザイナーの魅力や社会的な役割、どういった仕事に携わっているのか、現役の若手照明デザイナーにお話を伺いました。

 

まず有限会社シリウスライティングオフィスの戸恒浩人さんより、照明デザイナーが担う社会的な役割についてお話しいただきました。

光の体験を通じて人々の生活や時間を充実させ、公共空間を魅力的にすることが照明デザイナーの役割だという戸恒さん。そのためには、常に新しい光の表現を試みることが大切だと説明してくださいました。

また、照明デザイナーは「本来建築や空間に備わっている美しさを、さらに引き立たせる存在」であるとし、メイクアップアーティストに例えたお話もいただきました。

 

続いて、2名のパネリスト(有限会社シリウスライティングオフィスの小林周平さん、株式会社松下美紀照明設計事務所のパクホンジュさん)からお話を伺いました。

最初は、大学で建築を学んでいたという小林さんです。実例を挙げながら、照明デザイナーがどのように仕事に取り組んでいるのか、技術面の説明も含めて教えてくださいました。インプットとアウトプットを繰り返してきた小林さんにとって転機ともいえる出来事は、香港勤務での体験。国内で活動しているだけでは分からない、文化の違いや海外からみた日本の照明デザインを客観的に知ることができたそうです。

そして、自分だけの照明デザインを生み出すには、感動的な光に出会う経験・体験の積み重ねが大切だと話してくださいました。

次は、マスコミ系の大学卒業後、一般企業への就職を経て照明デザイナーになったという、一風変わった経歴の持ち主であるパクホンジュさんです。実際に携わったプロジェクトをもとに、シミュレーションや現場の調査、現地での実験の重要性や、それらを組み合わせてデザインする緻密な仕事について、丁寧に解説してくださいました。

また「Variety、Versatile、Value」の3つのキーワードをあげ、照明デザイナーという仕事の魅力は、様々な人と関わりながら社会に寄与できる照明を生み出すことであり、自分の感受性を高めるために積極的に勉強することの重要性を話してくださいました。

質問コーナーでは、学生代表として東北工業大学の五十嵐聖人さんから質問していただきました。「照明デザインの力で、どこまで都市の魅力を生み出すことができるのか」という質問に、小林さんは「限界を明言したくない」と前置きしつつ「一つの都市全部を照明デザインすることは難しいが、関わった建物の照明とその都市の景観の相互作用を考えながらデザインすることで、都市空間の魅力を高めることができる」と回答されました。

パクさんは「プロジェクトの中で照明のデザインだけでなく景観のガイドラインをつくることもあり、それによって都市空間を変化させることができる」と回答されました。また、このセミナーの幹事である馬渡秀公さんと梅田かおりさんにも伺うと、馬渡さんは魅力を生むというよりも、一つの物件の照明から都市が育っていくイメージを持つことの大切さを、梅田さんからは一つ一つの光の積み重ねが都市の魅力につながることを語ってくださいました。

最後に戸恒さんより、ガイドラインによって都市景観が画一的になってしまう恐さと、リーダー的な存在となる光を定めることで、その周囲に新たな光が誕生し、都市全体の魅力を高めていくこと、それらの重要性について、ご指摘いただきました。

「シミュレーションで意図していないところで上手くいった経験は?」という質問に対しては、パネリストのお2人とも「意図したように表現することを心がけている」とした上で、小林さんは、人工照明と自然光がきれいに組み合わさった瞬間に感動すると回答。パクさんは、照明の色を合わせるには空間や器具を実際に見た上での判断が重要と回答されました。戸恒さんは、シミュレーション通りにならないことは沢山あり、現場で対応しながら解決していった経験を話してくださいました。

 

その他にも学生の皆さんの鋭い質問にパネリストのお2人も驚きながら、その熱意に応えるように詳しく回答してくださり、今回のWEBINARは終了しました。

【日時】2021年8月6日
【会場】IALD Japan WEBINAR
【モデレーター】水馬弘策 ※敬称略
【パネリスト】 戸恒浩人 パク・ホンジュ 小林周平 ※敬称略
【主催】IALD Japan