EVENT

【EL15】公共交通機関の照明

世界的に有名なエンジニアリングファーム、アラップのニューヨークオフィスからシニア照明デザイナーのクリストフ・ジゼル氏とケビン・ウーマック氏を招き、近年、両氏がニューヨーク、コペンハーゲン、パリ、ベルリンで手がけた地下鉄のプロジェクトを紹介しながら、公共交通機関における照明デザインの重要性が語られました。

まず、公共交通機関における照明デザインの社会的影響に関する事実が紹介されました。2030年までに世界の人口の約7割が、公共交通機関が最も利用される都市部に集中することが予測されていて、公共交通機関への投資は経済への波及効果が非常に大きいと両氏は指摘します。
中でも、電車の駅は空港とは違い多くの場合、街の中心部に位置しているため、都市で働く人や住む人にとってより身近で、インパクトの大きいものだと言います。最近では駅直結型の商業施設での売り上げが、路面店の売り上げを10期連続で上回っていることからも、公共交通機関における照明のデザインの重要性が増してきています。

 

【出典:http://catalystreview.net/

 

 

Copenhagen Cityringen © Arup

 

また、地下鉄や電車などの公共交通機関のプロジェクトにおいて両氏が重要視しているのは、利用者に照明デザインという手段でJoy(喜び)をもたらすということです。例えば、家から勤務先までの通勤の流れの中で、全ての体験を喜びや感動に満ちたものにはできないかもしれない。しかし、所々で楽しいMoment(瞬間)を演出することで、通勤全体の質を向上することは可能だと両氏は考えます。特に、ターミナルステーションのような終着点での喜びの体験は、通勤中のそれまでのつまらない体験を無しにして、人々の気持ちをリフレッシュし良い一日のスタートを可能にしてくれると言います。

 

Copenhagen Cityringen © Arup

 

そんな体験ができるのが、2014年11月に正式オープンした、ニューヨークのフルトンセンターです。フルトンセンターは、マンハッタンのダウンタウン、ウォールストリートの近くに位置し、10以上の地下鉄が乗り入れる巨大な地下鉄の駅です。このプロジェクトで、アラップのデザインチームは、アーティストのジェームス・カーペンター氏および建築担当のグリムショー・アーキテクトと連携して、自然光を駅の地下深くまで取り込む巨大な吹き抜け空間とその最上部に位置するドーム状のトップライトをデザインしました。これにより、この駅を利用する通勤客が、映画のハッピーエンディングのような「瞬間」を毎日体験できるようになったと両氏は言います。


【日時】2019年03月07日 14:15-15:15
【会場】東京ビッグサイト 会議棟1階 101会議室
【プレゼンテーション】クリストフ・ジゼル氏(アラップ ニューヨーク事務所 シニアデザイナー)、 ケビン・ウーマック氏(アラップ ニューヨーク事務所 シニアデザイナー)
【主催】日本国際照明デザイナーズ協会、日本照明工業会、日本経済新聞

Profile

Kevin Womack

Womack氏は、工学とデザインを幅広く学んで得た見識に基づき、照明体験の重要な要素である創造的かつ技術的な解決策を称える アイデアを生み出しています。芸術、旅行、イノベーション、テクノロジーといった照明以外の分野で得たインスピレーション、コラボレーション、そして人々との出会いが、Womack氏の「トータルデザイン」のアプローチを作り上げています。

Christoph Gisel

Gisel氏は、Arup(アラップ社)のニューヨークオフィスでSenior Lighting Designer(シニア照明デザイナー) を務めています。その仕事の主眼は、魅力的かつ刺激を与えるような環境を生み出すことにあり、Gisel氏はnighttime designer(ナイトタイムデザイナー) として、あらゆる人が集まる場所である公共スペースの価値を理解しています。公園や交通機関などの都市インフラの照明は、Gisel氏が仕事の上で意欲的に取り組んでいる分野の一つです。